「……そうですね」
「…え…」
バッと顔をあげて真木を見る。
心の中のどこかで、そんなことない、と否定してくれるのを期待していたから、ズンと胸が抉られた気分だった。
すると真木がブッと吹き出して
「…何泣きそうな顔してるんですか。
嘘に決まってるじゃないですか」
は…う…嘘!?
キョトンとするあたしにふっと微笑んだ真木が、両手であたしの手を握る。
「…センパイを初めて見たのは、高校に入学してすぐの時でした」
「…え?」
急にはじまった思い出話に、思わず目を瞠る。
「帰り道にコンビニの前を通りかかったら、不良にキレてるセンパイがいて。
こんな小学生がいっぱい来るところでタバコなんか吸って危ないだろって怒鳴ってて。
怖いもの知らずの人だなー、って思ったのが第一印象でした」
「…あー…」
言われてみればそんなこともあったかもしれない。
あの時は確か店員さんが警察を呼んでくれて事なきを得たんだった。
でもそれをまさか、真木に見られていたとは。
「次に見たのは学校で、愛海センパイに群がる男どもを蹴散らしてて。
パンツが見えるのも気にせず飛び蹴りしてました」
「パッ…」
…おい。あたし。
なんか常に怒鳴ったりキレたりしてるただの凶暴女じゃんか。



