その少女が既に多量の血を流しているのは一目瞭然だった。




けれど、その看護師が口を開こうとした瞬間。




彼女は身を翻して (ひるがえして) 去って行った。







運ばれた少年はとても話せる状況じゃない。



しかし、彼は意識を失った状況で一言だけ呟いた。




「く………るみ……」





愛おしそうに。



まるで、その言葉を宝物のように呟いた。




そして、彼は手術室に運ばれた。



彼もなお、自分の大切な人を守ろうとしていた。



命を賭けてでも、守りたいものがあった。




この夜、2人の少年と少女の想いは交差してーー儚く散っていった。