《胡桃side》



「今日は、全部忘れるんだ」



自分に言い聞かせるように、強く言葉を発する。



今日だけは、自分が裏の人間だということを全部忘れて、楽しむんだ。



この誓いを胸に、私は、いそいそと部屋を整える。




いや、部屋を “整える” という表現が少しおかしいのはわかっている。



でも、ほとんど家具のないこの家。



ちょっと買ってみた小物を置いたり、部屋に無臭の防臭剤を置いたり……


これを “片付ける” と表現するのはおかしい気がする。




「何かしないと……!!」



落ち着かない。



ソワソワする、この不思議な感覚が消えてくれないのだ。




なぜか?



発端は潤の一言だった。