「『一組の男女に見られました。どうやらどちらかが裏世界の住人のようです。』」
まるで、たった今聞いたかのように、それを言った。
まずい。
この内容が他のやつに知られたら……!!
「松永組組長、松永 影 (まつなが かげ)だったな。」
唐突にあいが、喋り出した。
その声は、野太く荒い、さっきまでの変装用の声ではない。
「なんだ。そっちは女だったのか。」
松永影は、含み笑いであいを見る。
「どうせ、その部下の声を録音して、裏世界に流そうとでも思っているんだろうけど……」
あいは一体、何を考えているの?

