たしか、七瀬は今部屋出たとかミサキが言ってたからまだ着替えてねぇよな。
一階の浴室に行く途中そんなことを考えた。
一階の脱衣所前。
ここまで来て、少し躊躇う俺。…なんか緊張する。なんて言ってる場合じゃねぇよ。七瀬が着替え始めたら、それこそ笑えねぇし。
…うしっ‼普通に。普通に。
気持ちをしっかり持ち直し、勢いよく脱衣所のドアを開けた。
………。
「七瀬ー。わり、寝巻き忘れたってミサキから聞いたから持ってき……た…ん…。」
普通に普通にと言い聞かせながら顔を上げた俺の目に映ったのは…。
…………。え。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ‼‼」
思考回路が追いつく前に七瀬の悲鳴が俺の耳に届いた。
「わ、わわわわわりっ。」
動揺しまくりの俺は、とにかくドア閉め脱衣所から出た。
心臓がこれでもかってほどうるさい。
「わりぃっ。ごめん。本当にごめん。ミサキが今入って行ったって言ってたからまだ服脱いでないかと…。マジでごめん。」
とにかく謝りたくて。でも、今は何を言っても言い訳にしか聞こえないだろう…。
あのミサキの言うことを簡単に信じた俺がバカだった…。いくら自分を責めても許せない…。
七瀬は動揺しながらも、俺の気持ちを察してくれたらしく…気にしてないとは言ってくれたが…。
七瀬としては裸を他人に見られたわけだし…。ショックを受けないわけがない。
お互い動揺しっぱなしのまま、俺はとりあえず部屋に戻った。
不可抗力とはいえ、まともに七瀬の体を見ちまったわけだが…。下着はついていたが、だからといって見てしまったことに変わりはない。
…にしてもだ。細すぎねぇか?
普段の制服姿だったり、私服姿だったり見慣れてはいたし、力あるくせに細ぇとは思っていたが…。華奢すぎねぇか?色も透きとおるくらいの白さだったし、腰だって折れちまいそうなくらい細かった。肩なんか…軽く触ったら折れちまうんじゃねぇかと思うくらい…。
って、俺‼忘れろよ。ていうか、忘れなきゃダメだろ。わかってる。わかってはいるんだが…。
忘れようとしても、正直無理に等しいというか、なんせ俺も思春期真っ盛りな男なわけで…。わざとじゃないとはいえ…。
「だぁぁぁぁぁあ‼俺、最低じゃん‼」
自分で自分が嫌になる。
ミサキの言うことなんだからもっと疑うべきだった。油断した。
部屋で一人悶える俺。落ち着け。落ち着けよ俺。
今は、これからいかに違和感無く七瀬に気を遣わせることなく普段通りに接するかを考えなくては…。
頭ではわかっているが、落ち着けない。
何か飲んでくるか…。深呼吸を一つしてから、落ち着くためにキッチンへ向かった。