午後の勉強の時間が終わり、夜ご飯も済んだ。
ちなみに、夜ご飯担当はカオル先輩。
あっという間に出来上がったのはご馳走ばかり。カオル先輩一人で五人前の料理をあの短時間であのクオリティ…。
なぜか惨敗感が半端じゃなかった…。すごく美味しかったし……。
今、時計は20:00を示す。私は割り当てられた自分の部屋に居る。
なんか…ちゃんとした勉強会って感じだった。堅苦しいとか、つまらないとか、そんなことは感じないのに、充実してたというか、居心地が良かったというか…。誘ってもらえて良かったと思う。
あいかわらず佐々舞尋は勉強してる様子はなかったけどね…。あれで学年首席とれちゃうなんて…。なんか腹立つ。
まぁでも、誰も文句言えないのはあの人が本当に実力を持っているからなんだと思う。
今日だって、ユキ先輩やカオル先輩がいくつか質問しに行ってたし…。少し聞こえてきた説明は、学年が違う私でも理解しやすくてわかりすいものだった。
信頼されていて、その期待に応えられる実力もある。それもあの人の魅力の一つなんだろう…。
そんなことを考えていた…。すると…。

ーコンコンッー

部屋のドアがノックされた。
……。
「どうぞ。」
私の声でドアが開いた。私を訪ねてきたのはミサキ先輩だった。
予想していなかった人物の来訪に少しビックリもしたが、そこまで態度には出さない。
「少しお邪魔するね。」
あくまで普段は紳士的な彼。彼の手には衣類が。気になって見ていると、私の視線に気づいたのか…。
「え?あ、これ?寝巻き。僕、これからお風呂なんだけどさ、寝巻き忘れちゃって…。舞尋から借りてきたんだ。」
わざわざ説明どうもです。ていうか…。
私も…。
「寝巻き忘れた……。」
今気づいた。
「そりゃ大変。」
とか言ってる割に他人事なミサキ先輩。
「まぁ、いっか。」
寝巻き代わりに何か服はあるし。余分に持ってきといて良かった。
それなことより…。
「…どうしたんですか?私に用ですよね?」
なぜだろう。相手がミサキ先輩だから少し警戒してしまう。何をされるかというよりは、何を企んでいるのか…と。それを察したのか…。
「え。そんなに警戒しないでよ。僕に七瀬を襲うなんて考えは120%ないから。」
「………。」
そこまで否定されると…なんか傷つく。さすがミサキ先輩。一言でここまでダメージを与えるなんて…。
「僕の用件は、これ。」
そう言って、寝巻きを持っている手とは反対のミサキ先輩の手から見覚えのあるシャーペンが。
「これ、七瀬のでしょ?リビングに忘れてたよ?返しとくね。」
見覚えがあるのは当たり前だ。私のものだったのだから。
「……すいません。ありがとうございます。わざわざ…。」
疑った自分が恥ずかしい。
わざわざ届けてもらって…。申し訳ない。
「わざわざ七瀬の部屋までくるの面倒だったんだけどさ、探してたら可哀想だなぁと思って。」
………。
「ごめんなさい。すいませんでした。」
笑顔なはずなのに目が笑っていないミサキ先輩。全力の謝罪をした。すると…。
「ぷっ。冗談だよ。舞尋の部屋に行くついで。大丈夫。気にしないで。」
さっきまでの笑みとは違い、柔らかい笑顔のミサキ先輩。とりあえず一安心。
「それじゃ、僕行くね。一階のお風呂もあったかくなったらしいから七瀬も入っちゃった方が良いよ。じゃあね。お邪魔しました。」
「こちらこそ、ありがとうございました。」
立ち上がって出て行くミサキ先輩にお礼を言ってから私も立ち上がる。ミサキ先輩が部屋を出ていくのを確認してから私も下着を持ってお風呂に行く準備を始めた。とりあえず、お風呂入って落ち着こう。私は寝巻き代わりの洋服を持って、部屋を出た。