リビングを出て佐々舞尋の姿が無かったから、とりあえず指示通り隣の部屋に入ろうとした。
その時っ…。
「おい。」
明らかに部屋の中からの声ではない。
声のした方へ恐る恐る向かう。
すると…。

ーグイッー

「…ぅわっ‼」
急に腕を引かれてバランスを崩した。
ーぼふっー
………。そのまま床に倒れるかと思ったら何かに当たって支えられた。
何事ですか?当たった何かを確かめようと目線を上げると…。
「…わり。強く引っ張りすぎた。大丈夫か?」
………。
叫ばずにはいられなかった。
「きゃっ……ぶっ⁉」
…が、叫ぶ前に口を塞がれた。っ⁉
手で塞げば良いのに…、この男は……っ‼‼
「叫ぶんじゃねぇ。」
妙に声のボリュームが小さい。…けど、そんなことより…この状況に叫びたいんだけど⁉
私は口を塞がれているんだけど…。私はなぜか今、佐々舞尋の腕の中に収まっている。佐々舞尋の胸の辺りに顔を軽く押さえつけられている状態。
痛くはないし、苦しくもないんだけども…。
心臓がうるさいのだ…。
「…むぐっ。むぐ。」
早く離れなきゃ。…けど。上手く喋れない…。
「…おっ、わりぃ。」
もがく私に気づいたのか、佐々舞尋から解放された私。すぐに距離をあけた。
「…な、なんですか⁉隣の部屋って言いましたよね?怒るなら怒ってくれて構いませんから…。」
いきなり何なんだ…。びっくりさせないでよ…。
「…あー。別に俺、怒るつもりねぇよ。」
………へ?なんですと?
「だって…怒ったから呼び出したんじゃないんですか?」
明らかに怒ってたじゃん。
「あー…。あれは何というか…ノリ?まぁ、用件があるのは確かだから。」
…なんだ…。良かった…。
でも、用件って?