歓迎会から5日経っての金曜日。
生徒会の活動の日。
今日はいつにも増して生徒会室へ向かう足取りが重かった…。

『俺が千咲ちゃんのこと好きだから。』

あれから何度も考えた。カオル先輩の真剣な顔が頭から離れない。
「どうしよう…。」
渡り廊下に響く私の声。
出会ってからまだいくらも経ってないのに、カオル先輩はなんで私なんか?
確かに優しいし、しっかりもしてるから頼れる先輩として仲良くさせてはもらってたけど…。
特別に何か接点があったわけでもない…。
「んぁー‼余計わけわかんなくなってきた‼」
頭の中がごちゃごちゃだ。
そこに…。
「廊下で悶えんな、バカ。」
聞き覚えのある声と共に頭を軽く叩かれた。
振り返ると…。
「なっ…。カオル先輩⁉…と、…あ。貴方ですか…。」
「おい、てめぇ…。俺はついでかこの野郎。」
タイミング…悪すぎでしょ…。佐々舞尋に会うことさえ考えてなかったのに…カオル先輩にまで今会うなんて…。
「なんか、久しぶりだね千咲ちゃん。」
カオル先輩の声にさえ普通に反応できなくなっていた。
もちろん、顔なんて直視できるわけもなく…。
「にっ、日曜日以来だから…ですね…。」
上手く喋れない…。
佐々舞尋もいるのに…最悪…。
自然と視線は下にいってしまう。
「…七瀬?お前…なんかおかしくね?」
佐々舞尋の言葉に肩に力が入った。
「そんなことは…ないですよ。」
出来るだけ自然に…。
違和感なんて…感じさせちゃいけない…。
「そんなことより、今日の仕事しなくちゃですよ。ユキ先輩とミサキ先輩、生徒会室で待ってるんじゃないですか?」
今は違うこと考えなきゃ。
仕事だってあるんだし。しっかりしなきゃ。
自分に必死に言い聞かせた。
「じゃっ、私先に行きますね。」
その場から逃げるように走り出した私の耳に…
「わかりやすいなぁ…。」
微笑みながらつぶやいたカオル先輩の声は届くはずがなかった…。