………。
「そんじゃ、僕らは観戦といきますか。」
七瀬がコートに入ったのを確かめてからミサキが俺の隣で腰を下ろす。
………。
俺は、そんな穏やかじゃない。
……ユキのやつ、七瀬と何話してたんだ?
「なぁ。ユキって今フリーだっけ?」
腰を下ろしたミサキになぜかそんなことを聞いていた俺。
ユキは汗を拭いながらこちらに戻ってきている。
「ユキ?今はフリーだったんじゃなかったか?」
「……そっか…。」
ミサキに深く掘られる前に、話題をすぐ逸らした。
「ただいまぁ。疲れたぁ。」
ユキが戻ってきた。
「おかえり。お前、バスケ部でもやっていけんじゃない?」
ミサキとは反対側の俺の隣に腰を下ろしたユキにミサキが話しかける。
「はは。無理だよぉ。僕はサッカーしか興味ないもん。」
「まぁ、確かにユキはサッカーだな。」
「でしょ。」
間に挟まれながらも、俺はユキを観察してしまった。
いつもと変わらずのニコニコ顔は変わらないんだが…。
「あ、始まったよ。七瀬とカオルの試合。」
ミサキの言葉でコートに目を移す。その時だった…。
コートに視線を移そうとした一瞬の出来事だ。ユキの頬が微かに赤くなり、いつもとは違う微笑みでコートを見つめていた。ユキの視線の先は……七瀬。
……。嘘だろ…。
なんでだろう…。嫌な予感がした。確信はないけど、ユキがなにを考えているか…想像できてしまったのだ。
……マジかよ…。