Dear.愛する人。


気のせいか、一唏は一瞬、悲しい表情をした。


「……最低」


堪えきれなかった涙を流しながら、廊下を全速力で走った。



私が翔平を好きな事なんて、誰にも言った事なかったのに…

莉奈でも気付いてないはずなのに…

一唏は、どうして分かったの?

「説教終わったぞ、柚菜」

教室の机に伏せて、涙を止めようと必死になっていた私に、肩を組んでくる翔平。

「…柚菜、元気ないな、昼飯忘れたのか?」


鈍感で、バカで、優しい翔平。
こんな翔平が大好きなの。
好きで好きで、たまらないの。


「柚菜?顔上げろよ……っおい」

顔を上げた私を見て、びっくりする翔平。

「誰に泣かされた?俺がボコボコにしてやるから」


バカ、バカバカ……

優しくしないで。
勘違いしちゃう……

また、一唏に………

「ほら、飴やるから」

翔平には合わないイチゴ味。


「……ありがと」