「あっ……」

一唏に起こされて立った私は、職員室の前に翔平の姿を見つけた。


説教、終わったみたいだね。



翔平の元へ行こうとした。
しかし、自然と足が止まった。


「翔平、今日ヒマ?」

「おん、なんで?」

「合コン、一人足りないの…翔平来てくれたら、皆喜ぶと思うんだ~」


合コン……?
翔平が、他の女の子と合コンするの?



「いいよ。でも、俺は誰にも手出さないから」


内心、ほっとした自分。
誰にも手出さないって事は、ただの食事会じゃん。


「バレバレ」

「えっ?」

後ろに居た一唏の言葉にドキッとした。


「川西翔平、あんたの好きな人」

「ち、違う!」

顔がみるみる赤くなっていくのが、嫌でも分かる。








「…やめとけ」


一唏の真剣な眼差しが怖かった。


「なによ、急に」

「あんたには似合わない」

無愛想な顔に、無愛想な言葉。
なんで一唏にこんなこと言われなきゃならない訳?

「川西は、あんたの事を何とも思ってない」

「……そんなこと、分かってるよ」

「分かってないから言ってる」

「何なのよ、急に!片思いしちゃ駄目!?いちいちそんなこと言わなくても大丈夫だから!!」

私にくれた1000円を、一唏に投げつけ、教室へと走った。