薄いシルクのストールを、まるで羽衣のようにまとって、真由はふわりふわりと歩いて見せた。
貢は、そんな真由の華奢な肩が月明かりに照らされるのを見ながら、言葉に詰まった。

「ねえ。捕まえて。」

真由が消え入りそうな声で言う。

貢は腰掛けたベンチから立ち上がろうともせずに、シャツの胸ポケットから煙草を取り出した。

「意気地無し。」

真由は貢に背中を向け、丸い噴水の池の淵を歩きだした。

そしてクルリと一回りすると、再び貢に向かってポツリと呟く。

「どうして、捕まえに来てくれないの?」
そうして、また池の淵を歩いて一回り。
今度は貢の間の前に来て言う。

「私はここよ。」
消え入りそうな声。
今にも溢れそうな涙。

「帰れ。」
貢が言った。