「んー」


知らない間に眠っていたらしい。

「夏生…?」

隣で夏生もイスに座って寝ていた。

サラサラの髪の毛に

少し触れてみたくて手を伸ばした…ー。

「何?触りたい?」

「いや、そんな訳ではなくて…」

起きてるなら、早く言ってよ。

凄い恥ずかしい。

「俺さ、触りたいのあんだけど」

そう言って私に向けて手を伸ばした。

触れたのは、首にかけられている

ネックレス。

「付けてんだ。良かった」

「うん、これね凄い可愛いから」

「似合ってるよ」

夏生は、凄く嬉しい時、

必ず頭を二回ポンポンと叩く。

それが、合図。

「じゃあ、帰ろう」

私の鞄と夏生の鞄が

夏生の肩に掛けられて

一緒に揺れていた。

「七瀬さ、好きな人いんの?」

急だった。

ついつい、夏生だよと

言ってしまいそうになった。

「居るよ」

「俺、応援するわ、七瀬の恋。友達として」

それは、ちょっと分からない。

「今日はもうここでいい。帰って」

そう言って、私の鞄だけを持ち

夏生に背を向けた。

応援するわ、なんて

友達として、なんて

この恋はアナタに向けられてるのに

そんなの言われても困るよ。