でも、私はまた、教室の中に入れなかった。
そこに広がる光景が、あの時とそっくりだったの。
あの日の夕焼けの教室に……。
今日は窓際に寄りかかって、ひとりの男子が顔だけを外に向けている。
細身で背が高く、相変わらずのだらしない制服の着方。
あの姿は、本郷大翔以外にいない。
今日はずっといなかったのに、なんで放課後にだけ現れるの?
私はあれからずっと、文句を言いたくてしょうがなかった。
あんな失礼なことを言ったんだ。
みんなに不良と思われているアイツにだって、文句のひとつも浴びせてやる。
私は固く拳を握って窓際まで歩き始める。
「放課後の今まで、授業サボり? いいご身分ね」
彼と2メートルの距離を開けて、私は相手を睨みつけた。
すると彼は、ゆっくりとこっちに向いたんだ……。


