キズだらけのぼくらは



「桃香、今日もうさぎリンゴだ。いいなぁ」

「本当だ。俺久々にそれ見た」

ふたりとも私の弁当箱の中をのぞいて瞳を輝かせながら、早速話のタネにする。

「お母さんが勝手に入れるんだってば。結愛、あげる」

「ありがと、桃香ぁ!」

私が照れ隠しでちょっとぶっきらぼうにリンゴをあげれば、結愛は弾けるような笑顔でそれを頬張ってくれる。

ふくらんだ頬はリスみたいに可愛くて、私たちはそれだけで笑い声を響かせた。

こういう感じ、いいな。

みんながいるって楽しいんだね。

私はほのぼのとふたりを見やりながら、更に思う。

穏やかに微笑むようになれた新太と、本来明るい結愛はとても似合っているなって。

人って、こんな風に自然と惹かれあっていくのだろうか。

ただただ、ここに流れている空気が優しくて、私は好き。

冬が目前なのに、ひだまりもこの空気も、眠たくなるくらい心地いい。