私はひとり歩いて、今、金属の重そうな扉の前にいる。
今回は、そのひんやりとしたドアノブを自分の手のひらいっぱいに掴んで、一気にひねった。
もう、こんな扉重くない。
どんどん開いていくドアの間から、あたたかな閃光が飛び込んでくる。
そして、私はドアの向こうへ一歩飛び出すと、伸びをして大きく息を吸い込んだ。
目に見えるのは太陽と、果てしない水色の空。
心がスカッと晴れ渡って、空に笑いかける。
「桃香、こっちこっち」
「羽咲」
ちょこんと座りこんでいる結愛が首をこちらに向けて、笑顔で手まねきをする。
その傍らに胡坐をかいて座っている新太も、私に呼び掛ける。
それに私はふふっと笑って答え、結愛の隣に腰を下ろす。
みんなで弁当箱を出して、床に広げる。
それだけでにぎわう。
こんなこと、今まで味わえなかった。


