撫でつけてもちっとも視界に入らない前髪を引っ張りつつ、私はランチバッグを手にとって席を立った。
私にはやっと偽りじゃなくて“本物”が見つかったから、私はそこへ行くのだ。
教室から、軽い足取りでまっすぐ廊下へ出る。
周りの目なんて気にならなかった。
囁きなんて耳につかなかった。
もう、気にも留めようとは思わないよ。
マイペースに歩いていく視界には、黒板のふざけた落書きが踊り、廊下の窓ガラスから見えるスカイブルーが私には綺麗に見えていた。
そんな風に軽い気持ちで教室を出て、廊下を歩く。
私は窓の外の大きな空に目を細める。
前髪を切ったからいつもよりも日差しが眩しくて、空がクリアに見える。
そんな空に私は微かに微笑んで、前を向く。
早く、みんなのところへ行こう。
もっと広い空を見に。