車イスの車輪が光ってキュッととまった。
私は圧倒されたまま、目の前の女の子を見上げる。
「ごめん、ごめんね……。こんな私なんかいない方がいいと思って、ずっと出てこられなかった……」
黒い車椅子に乗った、白いパジャマ姿の小柄な女の子。
ペダルに乗っている素足はとても小さくて、大きな瞳はゆらゆらと不安定に輝いている。
その時、彼女の堪え切れなくなった涙が、まん丸くなって落ちていった。
まるで、今日の夜空の、星の粒が降り落ちるみたいに……。
そして、ザッザッザッと地を踏みしめる確かな足音が響く。
「そんなこと気にしてんなよ。前みたいにちょっとワガママで、兄貴を振りまわすくらいの妹でいてくれよ……」
開け放たれた窓のところまで彼が歩いていって、手を伸ばす。
吹き抜けていった風に、海夏ちゃんの長い黒髪が舞う。
「……よかった。ありがとな、海夏」
無理と抑え込んだような大翔の呟きが、心に響く。
大翔は、窓の外から海夏ちゃんを抱きしめていた。


