暗いせいでよく見えないけれど、彼の見開いた瞳がキラキラと堪え切れなさそうに輝いているのがわかる。
やるせない拳が強く強く握られている影も見える。
それだけで、私の胸の奥に熱いものが一気にこみ上げてくる。
もう、ふたりとも解放されるべきだよ……。
もう苦しむことなんてない。
私はそんな彼を見て、力いっぱいの声を振り絞った。
「海夏ちゃん! 出よう!」
涙が飛び散っていく。
ポケットの中で、あの時間を知らせるためにスマホが震えだす。
私はそれに目を見開き、ハッと息をのむ。
時間がもう来ちゃった……。
けれどその刹那、シャッと大きな音がして、私はとっさに仰け反った。
目の前で、窓ガラスがスライドする。
透明の壁が、するすると横へ取り払われていく。
壁を押しあける白くて細い指先が見える。
「恨んでなんかいるわけないじゃん……! お兄ちゃんのバカっ」


