さっきまでなにも書かれていなかったまっ黒なホームページに文字が記されている。
まるで魔法でもかかったみたいなその現象に、私は目を丸くした。
黒いホームページは青くマークされ、一番上には“月がいなくなった夜”と書かれている。
そしてその下には、クレーターによって凹凸のできているリアルな丸い月が現れていた。
今もまだ、この仕掛けに呆気にとられている。
アキムはこんな手のこんだサイトまで作って、一体何を企んでいるの……?
月の絵の更に下には、見落としてしまいそうなほど小さく“ようこそ”と書かれたリンクがある。
私はマウスポインタをその位置までゆっくり移動させるけれど、クリックしようとする指先が震える。
この先になにがあるんだろう。
虫の歌声も聴こえなくなった部屋に、私はぽつんとひとり。
パソコンの小さい唸り声しか聴こえない部屋で、たかがパソコンの前でこんな思いをしている。
そう思ったらおかしくて、私は“ようこそ”というリンクに吸い寄せられていた。


