私は窓にぴったりと手をつけ、掠れ声で訴える。
今は思う、今知ったことすべて、昔の私に教えてあげたかったって。
だけど……、だから気づけたんだよ。
私が気にしてきた一軍も三軍も関係ない、自分を演じる必要もない。
ただ自分に素直に人と向き合えれば、幸せなんだ。
私は、今からでもやり直せたよ。
だから、海夏ちゃんには伝えたい。
同じようにもがいて、自分をキズつけなくていいように。
私はふとポケットからスマホを取り出し、画面を表示する。
ちょうど時計の数字が、48から49に変わる。
「今日がなんの日か知ってる? ……あと1分で新月だよ。もう、そこを出よう?」
スマホをきつく握りしめ、不安に眉根を寄せる。
時間のなさに焦りが増す。
冬の予感をさせる夜風が容赦なく冷たい。
指先の感覚を鈍らせていく。


