キズだらけのぼくらは



耳を掠めていく風音と、前の道を走り抜ける車の轟音。

そんな音たちが重苦しくて、もどかしい。

早く海夏ちゃんを助けたいのに、停滞したまま刻一刻とあの時間が迫る。

「やめてよ……。だから、やめてってば!」

その時、堰を切ったように海夏ちゃんの声が溢れた。

「今更無理なの。私は、家族に、散々あたってきちゃったんだ。なのに、もとになんて……、もう戻らないもん……。戻りたくても、戻れないよっ……」

弱々しい声でそう紡ぎ、窓の向こうで泣いている。

言葉の途中で何度もしゃくりあげ、何度も言葉を詰まらせている。

厚いカーテンの向こうに、普通のどこにでもいる中学生の女の子がひとり蹲っているのが、私には見える気がする。

別に特別なことじゃない。

痛くて、苦しくて、どうにも消化できなくて、誰にも言えなかった本当の心の中。

みんなあるんだよ、きっと、そういう気持ち……。

「戻れるよ! こんな私にもチャンスがあったんだよ。人はいっぱい間違える分、やり直すチャンスもちゃんとあるんだよ!」