キズだらけのぼくらは



私はその言葉を目で追うように、もう一度空を仰いだ。

「闇サイトっぽい名前にも意味がある。……新月だよね。月の姿が見えなくなる瞬間。流れ星みたいに、願いが叶うんだよね」

海夏ちゃんのことを少しでも知りたくて、新月のことについて調べたら、ネットにはそんなおまじないばかりが出てきた。

それを知った瞬間に、海夏ちゃんの想いが伝わってきたよ。

「ねえ、海夏ちゃんの願い、こんなに優しいじゃない。ねえ、みんなに幸せになってほしいんでしょ? お兄ちゃんに前みたいに戻ってほしいんでしょ?」

暗がりでカーテンが揺らめいている。

けれど、どんなにじっと見つめても、答えが返ってこない。

「海夏……」

大翔は弱々しげにつぶやいて、私をおさえつけることも忘れ、呆然と立ち尽くしている。

力尽きているような頼りない声だけが、夜の湿った風に乗って、重く耳にこびりつく。

それ以外、イヤにしんとしている。

誰も声を発さないし、私も言葉が出てこない。