私は下唇を噛み締めてから、海夏ちゃんに静かに話しかける。
「キズつくばかりじゃなくて、キズつけることだってある。それでも、私たちは諦めきれないんだよ」
話していることは、全部全部全部自分のこと。
人にキズついて、だから人を騙してキズつけて、それで自分もキズついて。
そんなことばかり繰り返してきた。
自分で作った殻に、かたく閉じこもってきた。
なんにも学ばずに、気づかずに、キズだらけになってきた。
どうしようもないほどにバカで、空回りしてきた私。
「それが、人なんだよ。ひとりがさみしくて、空回りばかり繰り返すんだ。海夏ちゃんも、そうでしょ……?」
私はそんな簡単なことに、やっと気づいたよ。
だから今、こんなに広い空が見えている。
部屋の小さな窓枠からじゃ絶対に見えないこの空。
大きな空の闇に、吸い込まれそうだと怖くなることもない。
仲間と一緒に見上げる夜空は、ただただ、綺麗っていう言葉しかないんだ。


