同時に、女の子の金切り声が聞こえてきた。
その声に彼は凍ったように止まり、手の力が弱まる。
私は彼女の声に一生懸命耳をすまし、彼をふりきると窓のそばに歩み寄った。
「そうだよ。他人の苦しみなんて、わかるわけないよ……」
穏やかに言いながら、私は頷く。
そして、私は窓の前にぺたりと座りこんだ。
「だけど、ほんの少しならわかる気がするよ。私も足に怪我をして、それから人生が、どんどんダメになっていく気がしたから」
私は暗がりの中で、随分とくたびれてきたスニーカーをなんとなく見つめながら話した。
耳をすましても、中からはもう声も、なにかを投げつけるような音も聞こえてこなかった。
「周りが憎らしいよね、恨めしいよね。私は、昔友達に裏切られてから、ずっとそんな風に周りを見てきたよ。自分の足は大嫌い、周りの人間なんて信用できるもんかって」
ちょうど座った場所に生えていた草を握りしめて、乱暴に投げ捨てる。


