私はかたく握った右の拳で、あの右側のドアを何度も何度も強く叩きつけた。
「海夏ちゃん、ねえ、そこにいるよね。いきなりだけど話があるの」
窓がガタガタ震えだすほど、私は強く叩く。
「お前、なにしてくれてんだ!! やめろ、バカ!」
急いで飛んできた彼が私を羽交い締めにする。
容赦ない力でおさえられて痛い。
だけど、こんなことで逃げ出すわけにはいかない。
「海夏ちゃん! 私、大翔から話を聞いたんだ。海夏ちゃんは、本当に今のままでいいの? ずっとそこに閉じこもったままで、お兄ちゃんとも一度も口をきかないで。本当にいいの!?」
私は羽交い締めにされたままもがき、声をすり切らしながら叫ぶ。
「出ていけ! 早く出ていけ、羽咲!!」
彼の怒鳴り声に耳がつんざかれそう。
彼の力に勝てず、体が引きずられていく。
それでも、私は呼びかけた。
「海夏ちゃんが求めてることって本当は、今の生活にはないよね? 海夏ちゃん!」
そう言葉をぶつけた瞬間、窓が揺れてガンっと大きな音がした。
「なんにも知りもしない人が、知った風に言わないでよ!」


