スマホを取り出して見る。
時刻は、21時10分。
21時50分まで、あと40分。
なにがなんでもその時刻までじゃなきゃ、ダメなんだ。
それまでに私は、ふたりを救ってみせる……。
私は、家の入口の前にしっかりと踏ん張って立ち、迷いなく前だけを見据えた。
だって、今日はそのために、ここまで来たんだ。
その時、玄関のドアが開いた。
よく知っている顔のふたりが出てくる。
新太と……アイツ。
アイツは、私を見るなり案の定目を見開いて、顔を歪めている。
「関谷、話が違うじゃねえか。なんで羽咲がいんだよ?」
「目を逸らさないで前を向く時が、お前にも来たんだよ」
新太は玄関先でアイツの肩を叩くと、私の横を通り過ぎていった。
そして、新太はすれ違いざまに私に向かってつぶやいたんだ。
「あとは、頼んだぞ」
私は、ただ黙って頷いた。


