音もなく落ちたそれは、私の足下にころりと転がった。
でも、私はぼうっとしてなにも言葉が出てこない。
「もう手当てもすんだ。帰れ」
彼は私の手の甲で包帯をとめると、私の腕を無理やり引っ張って立たせるのだ。
「まっ、待ってよ! なんで一方的に終わらせるの!?」
「お互いにもう用はねえだろ。俺はお前を利用した。お前はアキムをつきとめた。もう、終わってる」
彼が静かに、だけども力強く断言する。
こんな時コイツはよく、涼しげにせせら笑いなんかを浮かべるのに、私の目をまっすぐに見て、大真面目な顔をしている。
私は食い下がるまいと、背の高い彼の目を睨むけれど、まったく揺らがない。
彼は睨みもせずに平然と、切れ長の目で見下ろしているだけだった。
私の睨みも心も、彼の心が読めない瞳にグラグラに揺らがされる。
そのちょっとムカつく切れ長の目も、人をせせら笑う唇も、嫌いだったのに……、そんな真面目な顔は見たくない。
怖いから……、さみしいから……。


