正直、ここまでとは思わなかった。
実際に見ると、思わず怖くなってくる、海夏ちゃんの闇の深さに。
このパソコンを投げ出した時、海夏ちゃんはどんなに苦しかっただろう……。
「おい、ぼけっとしてないで手出せ」
彼は突然イラついたようにそう言って、私の右手を引っ張った。
「ごめん……」
私はぽつりと謝ったけれど、イスの横の床に座って私の手のキズの具合を見ている。
つい、私は我慢できなくなって重い口を開いた。
「ねえ、あれからどうなの……海夏ちゃんは」
すると彼は一瞬眉根にしわをよせて、手の力を抜く。
「お前が下で見たあの部屋が海夏の部屋だ。説明しなくてもわかるだろ」
彼は絶対に目を合わせず、淡々と言う。
でも、声だけは冷え切ったように低くて、私の胸は切なくなった。
なんてことなさそうな涼しげな顔に、冷静そうな声。
それがかえっておかしいんだ。不自然なんだ。
きっと、気持ちを一生懸命押し殺しているだけだから。
やせ我慢しているところなんか見せられたら、こっちまで苦しくなる。


