そんなことを思っていたらあっという間に2階に着いて、私たちはもう離れていた。
するりとほどかれた腕が名残惜しくて、彼の長い指先を見つめていた。
「ここだ、入れよ」
彼の声にハッと我に返る。
彼はもう目の前の部屋に入っていっていた。
私もそそくさと部屋に入って、こっそりと部屋を見まわし、不思議な気分になった。
男子の部屋なんて入ったことがないからもちろんわからない。
だけど、なにかが欠けているような気がした。
ベッドと机、小さめのタンス、それだけ。
色はあまり使っていなくて、グレーや茶色だけ。
散らかってもいない。
ううん、散らかりようもないくらい物がない。
彼の心みたいに、ただただ寒そうな部屋に見える。
きっと、なにもいらないんだな……、自分のためのものなんて。
あの日の事故にずっと責任を感じて、自分のことなんてどうでもよくなっているんだろう。


