ぺらりと垂れ下がったクロスの一部は揺れもせず、重々しくそこにとどまっていた。
まるで、時が止まっているような、悲しい感情しか詰まっていないような、冷たい空間。
私は、少しずつ足がそちらに向いていた。
自分自身の、今まで持っていた心に、どこか似ているの。
不器用な方法でしか、なにかを伝えることができなくて。
素直に言えなくって、怖くって、心の内側はあのクロスみたいにさかむけて……。
誰かや、どこかにあたって、もっと心の中が痛くなって……。
びっくりするような光景なのに、なんだかわかる。
涙が自然と滲んでいく。
海夏ちゃん……。
カーテンを閉めきったその部屋にいるのは、もしかして海夏ちゃん……?
「おい、人の家をじろじろ見んな」
でも突然、彼の低い声が響いて、私は慌てて廊下を進みなおす。
そして、彼は軽々と階段を上っていった。
だけど私は、上を見ては自分のすりむいた手の平を見る。
これじゃあ、右側の手すりを握れない……。


