ふいに、彼は私の背中で言った。
「来ねえのか? その怪我じゃしょうがないだろ。消毒ぐらいしてやる」
私はびっくりしてくるりと振り向いた。
彼はどんどん歩いていっていたけれど、その背中がなんだか丸くて優しい。
「そんなにどんどん行かないでよ……」
言いかえす言葉が弱っちいものになる。
心が小躍りして、私は彼のあとを追った。
開け放たれたままの門を通過して、雑草が目立つなんの手入れもされていない庭の中を通る。
私は少しきょろきょろとしながら、彼のうしろを歩いた。
家を見れば右側の窓ひとつだけが、分厚いカーテンまで閉めきられていた。
まだ日はそれほど落ちていないのに、なんでカーテンまで……?
庭といい、その窓といい、私は思わず首を傾げていた。
だけど、彼の背中は平然としていて、そんなこと気にする風もない。
すると彼はさっさと玄関開けて入っていった。
私は手に汗をかいて緊張していたけれど、玄関に足を踏み入れた。
「お邪魔します……」


