他の家と同じように多少は庭があるにもかかわらず、植木も、鉢植えのひとつも見当たらない。
家の形もどこもみな同じようなのに、なんだかひっそりとしていた。
「本当に……? そう、なんだ……」
私は言葉少なに答えて俯く。
ひゅうっと吹き抜けていく風が冷たい。
「まったく。この間あんなことになったんだから、ちっとは気をつけろっていうんだよ」
彼は軽く舌打ちをすると、自転車を止めて私の腕をぐいと掴んだ。
そして引っ張り上げて立たせてくれた。
「ありがとう……」
彼と目を合わせることができずに、私は小さい声でしかお礼を言えない。
息がしづらいくらいに胸の奥が苦しくなる。
少しの間だけ触れて離れていく彼の手がさみしい。
そうして彼は、また自転車を押しながら歩き出した。
また、離れていく……。
「おい、早く来いよ」


