キズだらけのぼくらは



「桃香……。本郷大翔に、なにがあったの?」

結愛の声が遠慮がちに聞く。

だけど、アイツの過去を思い出すと胸が余計に苦しくなって、私うまく話せそうになかった。

そうすると、新太が喋りだした。

「確か、中学の頃噂になってたな。妹が目の前で事故にあって、それから車イス生活、そして引きこもりになったって」

私はその話を改めて聞きながら、ゆっくりと顔から手を離す。

結愛は口に手を当てて息をのみ、目を丸くしていた。

そうだよね、私だってアイツから聞いたとき、驚いて言葉が出てこなかった。

「目の前で、自分の妹が事故にあったんだもんな。思うことも、いろいろあるだろ……。うろ覚えだが、その事故の前はああいうヤツじゃなかった。もっと、明るいヤツだったはずだ……」

私はかかっている布団の一部をギュッと握りしめた。

どうにもならないその過去が、私には悔しくてしょうがない。

「本郷だけ、なにも解決してないよな……」

虚しい言葉が病室に響く。

でも、言えることさえ、私たちにはもうなにもなかった。

布団を握りしめる私の手は、ただ震えていた。