でも、ふいに彼は言う。
「その様子ならもう大丈夫だな。結果的にいろいろ巻き込んで悪かったな」
思わず、首を傾げて彼を見上げる。
すると彼の大きな手がぐしゃりと私の頭を撫でた。
あっという間に手ははなされたけれど、彼の温もりが残っている。
私は俯いてぼけっと立ちつくす。
心臓が急激にうるさくなる。
風が、乱れた髪をくすぐるように吹き抜ける。
私の頬もかすめていったけれど、すっかり火照ってしまった私にはもっと冷たい風が欲しい。
「お前はひねくれてるくらいがちょうどいい」
今度はからかうような声が降ってくる。
「はぁ?」
私はすぐにしかめっ面をして、彼を見返した。
さっきちょっと優しいことを言ってくれたのに、なにその言い方!?


