「別に~。ひとりだったから声かけてあげただけ」
だけど私はおどけて、素直じゃない言葉を吐く。
もう目を合わせることもできなくて、なにげなく隣を歩くのが精いっぱい。
「そんなこと、お前には一番心配されたかねえよ。大きなお世話だっつうんだよ」
すると彼も、笑い交じりに言葉を返してくる。
まるで、へんてこなキャッチボールだ。
「ああ、そうですか。でも、アンタだって似たようなものだと思うけど~」
唇を尖らせて、私もまたふざけて返す。
だけど、これでいい。
少しずつ少しずつ、こうして彼に近づいていけばいいんじゃないかなって思う。
彼のことを見られない代わりに、彼の自転車の車輪がくるくると回るのを見て、私はひとり笑みをこぼす。
胸が、キュンとする。
彼にかんづかれないように、私は髪いじりだして誤魔化すんだ。


