「えっ……」
力をすとんと抜いて、静止する結愛。
新太はそれだけ言い残すと、すぐに教室の中へと姿を消していった。
「ねえ、桃香……。今、私、ほめられたんだよね……?」
夢を見ているみたいに焦点の合わない目で、私に問いかけてくる。
「それ以外にどういう意味があるの?」
私は、笑いながらため息をついて、無理と呆れたみたいに言葉を返す。
「わ、私、新太に、髪型ほめられた……」
結愛は両頬をおさえて、動転した様子でブツブツとつぶやきだした。
もう手では覆い隠せないほど、顔をリンゴみたいにまっ赤に染め上げて。
「ああ~、桃香どうしよう!」
ついには大きな声を出して、私の手に力強くすがってきた。
「どうしようもこうしようもないでしょ。よかったじゃない」
目の前ですっかりのぼせあがっている結愛を見て、自然と笑みがこぼれていく。
まっ白な廊下の床には、ふたりの友達同士の影が楽しげに動いていた。


