わけがわからなかった。

でも、可哀想っていう彼の声が、頭の中で反響する。

目眩がしそうになった私は、右手で鬱陶しい髪を掻き毟るように掴んで頭を抱えた。

自分を落ち着かせるように強く掴んだ。

なのに、いろいろな人の声が聞こえてくる。

小さな子供、同年代の生徒、年老いた人……。

今まであらゆる人に囁かれた“可哀想”っていう言葉……。

私は震える右手にもっと力をこめ、瞼をきつく閉じ奥歯を噛み締める。

そんな私に彼は、更にこう言った。

「ちょっと足が不自由ってだけで、自分を特別扱いしてるだろ」

その言葉に、私は目を見開く。

広い背中しか見えない彼。

けれど、その声は私を確実にせせら笑っていた。

そして、面白がるように、こんなことまで彼は口にした。

「そうやって周りの人間を自分から差別してるから、いつもひとりなんじゃねぇの」