「放せよ……、放せって言ってんだろ!!」
その時、委員長叫び声がとどろいて、新太を突き飛ばした。
新太はそのまま床に叩きつけられ、私の足下に飛んでくる。
「新太」
私は慌ててしゃがみこみ、横たわる新太に手を伸ばした。
怒りと痛みに歪む顔を見下ろすと、私の胸まで苦しくなってくる。
こんなことをしても、新太の心のキズは広がっているんじゃないの……?
ただ、苦しいだけなんじゃないの……?
でも、私が肩に伸ばした手に、新太の手が一瞬触れた。
そして、静かに払いのけられたの。
ずれたメガネの奥から、真剣な瞳を私に向けて……。
だから私はなにもできなかった。
今はなにもするべきじゃないと思った。
だって、新太はひとりで立ち上がったんだ。
叩きつけられた体をやっと起こし、血管が浮き出る手を床につき、自分の力で立ち直ったの。
そして、堂々と胸を張った。
見上げた白いワイシャツが、私にはひときわ眩しく映る。


