キズだらけのぼくらは



その瞬間だけ、鋭さがなくなって見開かれる瞳。

揺れる髪、見え隠れするピアス。シャープな顎のライン。

その一秒だけ切り取ったみたいに、彼はこちらを向いて私をとらえた。

その澄んだ黒い瞳に、胸が高鳴る。

けれど、すぐにその瞳は力なく細められて、委員長の方を向いた。

そして、背後にいる男子の首根っこを掴んで、教室の中に放り投げたのだ。

「これでも、しらばっくれんのか?」

冷たく鼻で笑う本郷大翔。

突きだされた男子はつんのめって、そのまま机にぶつかり、凄まじい音がたつ。

近くにいた生徒が悲鳴をあげ、慌てて飛びのいた。

でも、彼は震えあがりながら、急いで委員長に這い寄ると、必死に謝り始めたんだ。

「緒方……。悪かった! 許してくれっ。俺……、俺……」

私は思いきり眉をひそめた。

尋常じゃなかったの。完全に怯えて、委員長の足下で正座をしている彼が。