カバンにおさまったノートをもう一度見下ろせば、目頭が一気に熱くなった。

ファンデーションを分厚く塗りたくったあの頬を、思いきりぶちたくなる。

勝てっこないのに、やってしまいそうになる。

もう、こんなイジメうんざり……。

こんな場所からは1秒でも早く立ち去りたい。

私は荷物をすべて入れ終えて、カバンを肩にかけようとした。

「羽咲さん、どうかした?」

でも、こんな時、なぜかいつも聞こえてくる声が、今もしたの。

「委員長……」

カバンを持ちあげようとした私の前に、立ちすくむ委員長。

彼は優しく頬笑みながら私の顔を覗き込んで、穏やかに言う。

「もう帰り? 部活あるんだけど、途中まで一緒に行こうよ、羽咲さん」

私はすぐに俯いた。

秋穂たちの笑い声が遠のいて、委員長の透き通った声が頭の中にクリアに響く。