すり合わせていた爪先が、ぺたりと地面にくっついた。

また、セーターの袖口に覆われた結愛の手は、ベンチの襟を力をこめて掴んだ。

「私、ダメダメだった。なんにもできないただの弱虫だもん……」

結愛の声が弱々しく細る。

「今思えば、きたない女だったよ。一生懸命告白してきてくれたあの時の男子の気持ちを簡単に踏みにじって、秋穂の機嫌が早く直るように必要以上にぺこぺこして」

そう言うと、結愛は私の方を向いて情けなさそうに笑った。

「自己中でしょ、私。なにもできないくせに、空っぽなことばかりして、いつかどうにかなるって待って……」

膝にのっていたおにぎりが、まるで呆れたみたいに倒れた。

私は口の中に残っていた一粒のご飯も、喉に押しこんで口を開く。

「私だってそうだよ。見ていることと、なにも期待しないことと、諦めることしか知らない。自分のこともどうにもできないし、人を助ける勇気も力もないもん」

本郷大翔のことにしてもそう。

あんな過去を前にして、その痛みに浸ることしかできなかった。

雨の中歩いていったアイツを、引きとめることもできなかったんだから。