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からっとした新鮮な空気を吸い込んだ。

ぼんやりとした頭の中まですっきりさせるような冷たくて目の覚めるような空気。

体育館がまん前に見えるベンチに腰掛けている私は、そんな清々しい空気を鼻先に感じながら、視線を遠くに移す。

あの苦々しい日以来何日かぶりの、文句のつけようがないまっ青な晴天は、赤く燃え始めた紅葉をくっきりと目立たせている。

赤色のもの、ちょっぴり汚く見える茶色のもの、まだ若い黄色っぽいもの、どれも全く同じ色はなく、一本の木だけでも秋色のグラデーションになっている。

様々な葉が、色付き合って、重なり合って、風にざわざわと揺れる。

そんな紅葉の葉は、赤ちゃんの手みたいな形をしていて、懸命に天へ向かって手を伸ばしているように見えた。

その手を優しく包み込んでくれるものも、その先に待っているものもなにもないというのに。

あの日と同じ、紅葉の赤に私は俯いた。

まっ赤で、乾ききった紅葉の絨毯の上で、あんな葉たちと同じように上を向いて来るあてもない誰かを必死に待っていた自分。

私は結局ひとりぼっちなんだとわかった、あの時間。

紅葉を見ると思いだしてしまうから、あまりこの季節は好きじゃない。