『海夏、海夏! おい、起きろよ! 起きてくれよ!』
俺は海夏の手を両手で揺さぶって喚き散らした。
戻ってきてくれよ。
俺にまた小生意気なこと言えよ。
ジャリジャリ君食べるんじゃなかったのかよ……。
『おい、海夏! しっかりしろよ、海夏!』
そう思いながら、俺はがむしゃらに呼びかけた。
涙を撒き散らして、瞼をギュッと閉じて、痛くなった喉から声を絞りとって。
だけど、急に空が泣きだしたんだ。
動かない海夏の細い腕に一粒、また一粒と雨が落ちた。
そんな雨粒にぼけっと見入っていたら、堰を切ったように大量の雨が俺たちに降り注いだ。
予測できないゲリラ豪雨。
予想もしなかった事故。
海夏はまた、俺に無邪気な笑顔を見せてくれると思っていた。
こんな時が来るなんて、思いもしなかった。


