キズだらけのぼくらは



俺は大きく目を見開いて、ジャリジャリ君から少しずつ先へ視線を移した。

その視線の端に映り込んだのは、アスファルトの上にばさっと広がっている黒いポニーテール。

息をのんで口を覆った。

細い腕が、小さな手が、俺の方に向かって伸びていたんだ、地面の上で。

必死に俺に手を伸ばしたみたいに、力尽きた白い手がそこにはあったんだ。

『あああぁぁぁ! 海夏!』

俺は泣き叫んだ。

すがるように海夏の手に駆け寄った。

『海夏、海夏、海夏っ』

壊しそうなくらいに手を握りしめて、海夏を起こすように何度も何度もその名を振り絞るように呼んだ。

トラック運転手が降りてきてなにかを騒いで言っていた。

でも俺にはそんなのを聞く余裕もなかった。

海夏の名を呼ばなくちゃ、海夏はどこかに行ってしまうような気がして、声が枯れるくらい呼び続けた。

ちっとも握り返してくれないその手を、強く強く握りしめた。