キズだらけのぼくらは



『海夏ぁ、走るなよ。ガキじゃないんだから、俺は無駄に体力消耗したくねぇんだよ』

俺は海夏の背中に向かって言ったけれど、無意味だった。

『私は速く帰って、ジャリジャリ君を食べるの! そんなんならヒロ兄おいてくから』

妹のくせにすぐ口答えをする。

海夏は数十メートル先を歩きながら一瞬俺をバカにしたように笑うと更に速度を上げて走っていった。

本当に困ったヤツだ。

俺も負けじと走り、ため息交じりの笑いを漏らしながら、いつもよりも早く流れていく家々の景色を見ていた。

そんな時、走る海夏のすぐ先に信号が見えたんだ。

信号は、まっ赤に光っていた。

『おい! 海夏、赤だぞ!』

俺はすぐに海夏に向かって大声で叫んだ。

『ん? なぁに、ヒロ兄?』

でも、無邪気な背中はゆらりと揺れながら、シマシマの横断歩道の上で俺を振りかえった。