私は最後のUの字をなぞると、自然にため息がでた。
でも、私はまたベンチの上に文字をなぞる。
「反対から書きなおすと……、UMIKA。そう、ウミカになる」
屋根のせいで手元は暗い。けれど、私が指でなぞっただけのUMIKAの文字は、ベンチの上にしっかりと浮かび上がってきそうな気すらした。
「だから、アキムの真の正体は、ウミカって子。この間アンタが言ってたように、あのサイトの創始者は、ウミカ」
私は、東屋の周りを包む雨音に耳を傾けながら、ほっと一息ついた。
そして、苦笑いを浮かべつつ、さらにこう付け足してみる。
今なら、聞ける気がするんだ。当たり前のことだけど。
「あと、ウワサでも流れてるけど、ウミカって子はアンタの元カノかなにかでしょ? いつも苦しそうな顔しすぎなんだもん、アンタ」
胸の奥になにかが刺さったように痛む。
けれどそんな痛みさえも、雨がしっとりと包んでくれそうで、私は能天気にあははと笑うことができている。
これで、私が気づいたことは全部聞いた。
心が一番聞きたがっていた、彼にとってウミカがなんだったのかというわかりきったことも全部……。


