キズだらけのぼくらは



「ねえ、ひとつだけ聞きたいことがあるんだけどいい?」

私は、すっと自然にその言葉を紡いでいた。

そして、彼と同じ方向を向いて座った。

決して彼の方は見ずに。

「なんだよ……?」

少し距離を置いた隣から、無愛想な声が聞こえた。

でも、その声は晴れの日の普段の彼とはちがう。

雨音に溶け込みそうなくらい、やわらかい声なの。

そんな声になるのもたぶん、私ではなく、あの子のことを想いながら返事をしているからなんだろう。

わかっているの。

わかっているからこそ、私はこれから彼に聞く。

この前気付いた、重大なことを。

私は、大量の雨のせいで白っぽくもやがかかった外の風景をぼんやりと見つめた。

公園の色付き始めそうなイチョウの木も、時たま車が通る前の道でさえも、なにかが一幕被ったように白くかすむ。

やっぱり、雨はベールみたいだね……。