なにも話しかけてこない彼を背に、私は両手をぎゅっと膝に押し当てている。
緊張から、思わず肩に力が入ってしまう。
そんなふたりの耐えがたい沈黙に、雨音は大きすぎるくらいによく響く。
屋根には穴が開きそうなほど雨が叩きつけられ、屋根を流れてきた雨水はバシャバシャと音をたてて、地面に落ちていく。
あたり一面が、そんな雨音のベールに包まれているようだ。
うるさいはずなのに、今はこの騒がしい音色に助けられている。
ざわざわする胸の内を落ち着かせてくれるような、この優しい音に。
私は、うしろにいる彼を静かに盗み見た。
彼はまた、東屋の外の雨をさみしそうな目をして見つめている。
やっぱり……。雨の日は決まってこうだ……。
こんな日は、きっとコイツの頭の中には、あの子しかいない。
私なんて、ここにいたって、いないのと同じ。
コイツと、あの子には、きっと特別なつながりがあるから。
いつも、あの子のことばかり思っているんだ。


