でも、気づくのにはちょっと遅すぎたよ。

もう、昔には戻れないんだから……。

私は今さらになって、肩にかけていたカバンを頭の上にかかげて雨をしのぎながら、道向こうに見える公園へと走り出す。

足元で無数に跳ねかえるビーズのような雨粒を蹴って、ただ一心に公園のまん中にある東屋をめがけていった。

なんとか東屋の屋根の下に滑り込み、私は自分が入ってきた入口の方をくるりと向いてカバンの雨をはらう。

髪に触れればもうぐっしょりと濡れていて、冷たく首筋に貼りついた。

屋根を打つ雨の音は騒音のようにうるさく、東屋の外は一向に収まる気配もなく、針のように鋭い雨の線が無数に見える。

そうして外を眺めていると、ふと東屋の外に一台のシルバーの自転車が止まっていることに気がついた。

私は小さく息をのむ。

今入ってきたとき、誰もいなかったと思ったのになんで?

私はおずおずと振り返って東屋の中を見渡した。でも誰も見えない。

おかしいなと思って首を傾げると、下の方になにやらうごめくものがうつりこんだ。